リゾートアイランド・セブのこだわり生活情報誌

セブのカンパニー物語②

半世紀越える名ブラン ド、全機種をセブで生産日比の技術の結晶、リコ ーペンタックス
by 麻生雍一郎
マニラ新聞セブ支局RIMP Picture

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   日本発の一眼レフカメラの先駆者ペンタックス。長年、卓越した技術開発力を誇っているが、そのレンズ交換式デジタルカメラの全機種がいま日本ではなくセブ州マクタン島のリコー・イメージング・プロダクツ・フィリピン社で作られている。フィリピン政府は産業の発展を図るためマクタン・セブ国際空港に隣接して輸出加工区(MEPZI)を創設、法人事業税の減免など優遇措置を取り、外国企業へ進出を呼びかけた。ペンタックスは視力がよく、手先が極めて器用というフィリピン人の特性も考慮、1991年に進出を決めた。
   同社の労働者数は一貫して1000人を超え、6割が女性だ。作業場は病院の無菌室を思わせる。精密なカメラを作るのに一番の敵はゴミ、埃(ほこり)。エアコンが効いたクリーンルームでは防塵服に身を固め、ゴーグルを付けた女性たちが計器を調整し、細かな作業の手を黙々と動かしている。初心者向けからプロが用いるレンズ交換式のカメラ、なかでも日本の「カメラグランプリ」はじめ、日・欧・米のカメラ関連の優秀賞を総なめし、高級一眼レフの象徴ともなってきた「645シリーズ」は、内蔵する2000個の部品を全て手作業で組み立てる。驚くべき職人芸だ。
   マネジャーの黒田真一郎さん(40)によると、「645シリーズ」担当は社内トップレベルのメンバーから選ばれ、日本で腕を磨いてきた職人たち。「手先が器用で、細かい作業に欠かせない視力―。フィリピン人ならではの最高傑作が645シリーズなのです」。シリーズ第一弾、645Dは4000万画素の緻密さで、昨年発売のモデルチェンジ機の「645Z」は5140万画素まで増え、生産が追いつかず、3か月待ちだった。これで写した引き伸ばし写真は、人の顔なら毛穴まで、木の葉なら一番端の葉脈までくっきり出ている。レンズとセットで100万円もするが、プロには喉から手が出るほどほしい1台だ。
   カメラの嗜好は大きく変わった。自分だけのカメラと色がほしい―。これに応えて同社では100色以上のカラーバリエーションを採用した。求める色にはお国柄が反映する。フィリピン人はブルー、スカイブルー、またコリー・アキノ元大統領が好んだ黄色などを、中国人や台湾人は赤やゴールドを好み、日本人はオレンジ、白、グリーン、紫、ブルーと多様だ。青、赤、白、黄色を配色した、フィリピン国旗を模したバージョンも100台限定で生産した。生産ラインは他にエントリー一眼と言われる「K50」、新しい機能満載の「K―S2」、中級者・セミプロ向け「K3」シリーズ、カメラ女子に人気なミラーレスのQシリーズなど、いずれも根強い人気を博している。
   マクタン島はアジア近隣国のマーケットにも近い。各国から注文が来ると直ちに製作に着手、日本なら2週間以内に発注者へ届けてしまう、という。

ナビ・セブ第12号[Navi Cebu Vol.12]より

陣頭指揮を執る小沼豊社長(59)へインタビュー
 Q  機械化が進むカメラ製作でペンタックスはほとんど手づくり。なぜ、伝統的な手法にこだわるのですか?
 A  カメラのシェア(市場占有率)では機械化を進めたジャイアントメーカーがマーケットの多くを占めます。それならうちはシェアは小さくても本来の伝統、文化を継承し手作業できちっとしたモノ作りをしようと。それに手で組み立てる、というのはフィリピン人職人の気質に合い、機械では作れない様々な要求に応えることができる。個性の時代にマッチした、一人ひとりが求めるカメラが作れるのです。
 Q  手先が器用といわれるが、どんなところへ出ますか?
 A  ハンダ付け、ビス止め、油の使い方……。うまいですよ。エンジニアと組み立ての優秀な職人が日本へ派遣され、徹底的に学んでから帰国します。彼らが手作りし、これなら、という段階で量産へ入ります。
 Q  100色ものカラーバージョンを作るとはー。
 A  最近は誰もが他人とは違うカメラを欲しがります。とくに女性はそうです。黒、シルバー、ワインレッドの3色が基準でしたが5年前、カメラにタブーといわれたブルーに挑戦し、さらに色々なカラーを取り入れました。これからも一人ひとりの嗜好に応えるカラーやデザインを考えたい。写真文化の中で感動を与えられる作品を撮れるカメラをめざします。
 Q  フィリピンで仕事をして感じることは何ですか?
 A  台風ヨランダの後、被災地を回りました。家や家財を失っているのにカメラを向けると怒るどころか、笑顔でポーズをとってくれる。励ましに行ったつもりが、こちらがいやされました。この国の雇用と発展のためにもセブ産の手作りカメラを世界へ普及させたい。そのための販売ネットワーク構築に取り組んでいきたいと考えています。

小沼豊社長右とマネジャーの黒田真一郎さん
無菌室のようなクリーンルーム精密なカメラが手作りで生産される
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