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『世界の言語シリーズ6フィリピン語』

大上正直/ジェニー・ヨシザワ共著大阪大学世界言語研究センター2012年、大阪大学出版会
文:澤田公伸

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   昨今のアジアブームもあってか日本の書店でもアジア語学系の文法書や会話本などのコーナーがにぎわっているという。フィリピン語関係の図書も同じで、文法書や旅行者向けの会話本、写真やイラスト入りの単語帳などが最近、数多く出版されている。そんな中でも、2012年3月末に出版されたばかりの『世界の言語シリーズ6 フィリピン語』(CD2枚付き)は、本格的にフィリピン語を習いたい読者にとってはこれ以上申し分のない、総合的な文法学習書としてお勧めできる一冊だ。筆者の大上正直教授(大阪大学大学院言語文化研究科教授)とジェニー・ヨシザワ同大学講師による詳細でかつ明快な文法解説に加え、豊富な練習問題やCDが付いているため自主学習が容易で、さらにフィリピン(特にマニラ)の最新生活情報がふんだんに盛り込まれているため、分厚い文法書でも飽きずに読み進めることができるのが嬉しい。
   まず、なによりもこの本は優れた文法書である。フィリピン語(タガログ語を中心とするフィリピンの国語)は、語順やang(「アン」と発音)などの標識辞、動詞の焦点(フォーカス)や相といった、英語などに比べると特異な文法を持つため勉強するのに骨が折れる言語であろう。しかし、本書では全30課を通じ、日常会話に基づいた例文を入り口にして、各課ごとにポイントを抑えた文法解説が順序よく紹介されている。この文法解説の部分は、2003年にやはり大上教授が書き下ろした『フィリピノ語文法入門』(白水社)をさらに拡充した内容になっており、かつてこの文法書を手引きとして学習した者にとっては分かりやすい。
   しかし、初めてフィリピン語を勉強する人には最初、言語学的な用語を用いた本書の解説に少し戸惑うことがあるかもしれない。とにかくこの際、あまり用語にはこだわらずにフィリピン文法の大まかな特徴を押さえることに注意を傾けていただければと思う。
   また、この本はうってつけの自主学習・練習帳にもなっている。各課の文法解説が終わるごとに最後に詳しい練習問題が付いているのが役に立つ。また、各課の例文会話の日本語訳と練習問題の答えの部分が別冊になっているため、何度も繰り返し会話部分を反すうしたり、練習問題などを解くうちに、逆に日本語からフィリピン語への翻訳練習にもなり、効果的に復習できる。あと、CDが2枚付いており、耳からフィリピン語を習得する上で大いに役立つのは言うまでもない。
   さらに本書は、フィリピンの最新事情が盛り込まれた楽しい情報誌としても楽しめる。ほぼ各課に「コラム」があり、フィリピンの携帯電話事情やジプニーなどの乗り方、大学の授業風景やフィリピン語の学習方法、さらに映画や歌、食生活など、フィリピン大学等に留学していた日本人元留学生たちが後輩たちに現地での生活や語学学習に関するアドバイスを飾らずに提供している。これらはたとえ大学生でなくてもフィリピンに興味がある人や滞在者にとっても貴重な情報だといえよう。フィリピンの観光地や生活事情に関する写真もふんだんに掲載されており、楽しく学べる文法書になっている。文法を勉強したい人だけでなく、フィリピンが大好きな人にもぜひ読んでもらいたい、まさに「一押しの」学習書である。

大上正直(おおうえ・まさなお)
   1976年,フィリピン語(タガログ語)の専門家として外務省入省後,2度の在比日本大使館勤務(最初の赴任時が5年8ヶ月,2回目が3年足らず,計8年半のフィリピン滞在歴)。1977年,研修と留学を兼ねてフィリピン大学でフィリピン語の学習・研究に取組み,1982年,同大学大学院フィリピン語・フィリピン文学研究科修士課程修了(同15年間勤務した外務省を退職し,フィリピン語の教員として大阪外国語大学助教授に転身。現在,大阪大学大学院言語文化研究科言語社会専攻教授。1996年,フィリピン国立国語委員会賞受賞。主な著書に『フィリピノ語文法入門』(白水社),『はじめてのフィリピン語』(共著,ナツメ社),『フィリピノ語決まり文句600』(語研),『現代フィリピンを知るための61章』(共著,明石書店),『ASEANの言語と文化』(共著,高文堂),『世界のことば・辞書の辞典アジア編』(共著,三省堂)などがある。
澤田公伸(さわだ・まさのぶ)
   マニラ新聞記者。マニラ新聞カルチャーセンター、フィリピン語講師。元大阪外大フィリピン語学科講師。
  ジェニー・ヨシザワ(Jenny Yoshizawa)
   1999年,大阪外国語大学大学院言語社会研究科(地域言語社会専攻)修士修了。現在,大阪大学や語学学校などでフィリピン語講師を務める。

ナビ・マニラ第11号[Navi Manila Vol. 11]より

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