リゾートアイランド・セブのこだわり生活情報誌
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「カオン・タ!(食べましょうよ)」のホントの気持ちは?

by ジャピーナッツ

   知り合いの人の家の前を通り過ぎる時、ちょうど食事の時間だったりすると「いっしょに食べましょうよ!」と誘われることが度々ある。フィリピンに来てまだ間もない頃、驚いて「いいです、いいです!」なんて断るんだけど、あまり頑なに断るのも感じが悪いかなぁ、なんて思ったりして、誘われるままに家の中に入り、そのままご飯をご馳走になる、なんてことが幾度もあった。決して裕福な家ではない。もともとお客さんに食べさせようと思って作っている食事でもなく、おそらくその家が普段、食べているもので、食卓の真ん中にご飯がドーンと置いてあって、おかずが一品、一皿に盛られて、「はい!」とプラスティック製の皿を渡され、勝手にご飯とおかずを盛り、手で食べる。断ることの方が何だか無礼な気がして、誘われるままに食べていた私だったけど、ある時、逆の立場で同じような場面があった時、私が誘ったフィリピン人は頑なに断って帰っていった。それから気をつけて見ていると、フィリピン人は自分が何かを食べるときに、そこにいる周りの人には必ず「カオン・タ!(食べましょうよ)」と声をかけている。しかし真に受けて「じゃあ、いただきます。」なんて言う大人はほとんどいなかった。みんな「シギラン!(気にしないで。)」と断っている。もしかしたら、「食べましょう!」というのは社交辞令というかお約束というかで真に受けちゃいけなかった?
   親しいフィリピン人に聞いてみると「そんなことはない。」と言う人と「そうねぇ、図々しいわね。」と言う人と意見が分かれる。結局のところ何が正しいというわけではないようだが、だんだんこちらの生活に慣れてきて、「食べましょうよ!」と言う機会も多くなると、「はい、いただきます。」なんて言う人は、心の中では「え?食べるの?」など驚く。
   嫁いできて間もない頃、鍋一杯にご飯を炊き、結局、そのほとんどは家畜の餌となる、なんてことを繰り返していた姑に対し、面と向かって何度も注意もしたが、聞き入れてはもらえなかった。家族が食べる分なんてだいたいわかるだろうよ、と、腹を立て、食事の準備は全て私がやるから、と姑には台所には立たせるのをやめた。しかし、それからしばらくして近所に住む親戚の子供たちが、食事時にも帰らないことが多くなり、こちらはあくまでも社交辞令のつもりで「食べていきなさい。」と言ったつもりなのだが、素直に従われちゃったりして、私の食べるものがなくなる、なんてことが続いた。ならば、最初から多めに作ると、その日はたまたま誰も来なかったりして、何日も同じものを食べなくてはならなくなったりして。結局、家を訪れて来てくれた人に「おもてなし」も満足にできないことは、その家の恥、みたいな感覚で姑は毎日、たくさんのご飯を炊いていたのかなぁ、なんて思ったりして。今でこそ、家の中に誰がいようが、誰にも「食べましょうよ。」なんて声もかけずに、自分の好きなものを涼しい顔で食べることができるが、その当時の私はまだ初心だったのよ。
   長距離バスや飛行機の中で、隣に座った人が、何やらゴソゴソとカバンから食べ物を取り出し食べるときも、見ず知らずの私に向かって「食べましょう!」と言う。もちろん笑顔で「気にしないで!」と言えるようになったが、おそらくそれは彼らにとって、人前で何か食べるときの礼儀なのだ。
ジャピーナッツの自己紹介
   1999年1月に初来比。半年後に移住し2000年にフィリピン人夫と結婚し一族に囲まれたコミュニティーで生活をしている。高校生の頃からフィリピン人に間違われ、日本だけではなく世界中どこを旅してもフィリピン人に間違われていたので、フィリピンに来たことはおそらく運命であったと今は思っている。フィリピン人からは「日本語、うまいね。」と根本的な間違いをされるほど溶け込んでいる、と自負しているアラフォー女子。
   さて時が過ぎ、以前、我が家で夕飯を食べていた子供たちは成長し、今では我が家を訪れることは滅多にない。その代わりと言っては何だけど、我が家の息子たちが他所の家でご馳走になっている。食事時になってもなかなか帰ってこないので探しに行くと、すでにドコドコの叔母さんの家でご馳走してもらったよ、などと当たり前のように言う。自らの経験から、それは社交辞令で本当に食べるなんて言われたら困るんだよ、と言うと、そうではない、ときっぱり自信満々で答える。実際のところはわからない。所詮、私は外国人の嫁だしね。生まれた時からここにいる息子たちにとっては「家族だから当たり前」なのかもしれない。それにしてもどんなものを他所で食べているのか興味があったが、最近はフェイスブックでいろいろな情報が入ってくる。それらを見る限り、とてもローカルなものをローカルらしく食べているようだ。たまにレストランなどで食事をすると「親のしつけ」を疑われる作法をする息子たちであるが、ちゃんと正しいフィリピンの庶民ではあったようだ。

ナビ・セブ第7号[Navi Cebu Vol.7]より

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