リゾートアイランド・セブのこだわり生活情報誌
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不思議のフィリピン

並ぶ人と並ばない人
by ジャピーナッツ

   日本人にとって一列に並ぶというのは、当たり前の話である。例えばデパートのトイレ。それぞれの個室の前で待っていては、先に待っていたのにも関わらず、たまたま中に入っていた人がなかなか出てこないと後から来た人が先に用を足す、なんて理不尽なことになる。しかし一列で並ぶと、先に待っている人から用を足せる。なんて公平で素晴らしい並び方なんだ。最近ではセブのデパートでもそんな並び方をトイレの清掃員が指導してるところもあるが、大抵は早い者勝ちの仁義なき闘いである。ウチの近所のサリサリストアなどは、相当に図々しくないと永遠に買い物などできない。
   ある時、コンビニに入った。会計を待っている人はおらず、暇そうにしていたレジのお兄さんの前に商品を置いた。すると、後から来た客が、もう片方のレジの前に商品を置く。お兄さんは、普通に後から来たお客さんの会計を始めた。こんなことはフィリピンでは当たり前であるから、怒ってはいけない。しかしどうしたらそういうことなるのか、一度じっくりお兄さんにも後から来た客にも聞いてみたいところである。
   またある日、スーパーマーケットのレジに並んでいた。結構な客がいたが、開いているレジは少ない。だんだんと長い列になってくると、何人かのお姉さんが出てきて、レジを開けてくれる雰囲気だ。完全にフライングをして、後から来た客がそのレジに並ぼうとする。するとお姉さん、「あっちで並んでください。」とピシャリと言った。そうだよね、先にたくさん待っている客がいるんだから、と思っていたのも束の間、準備ができると、長い列の一番後ろの客に、こちらへどうぞ、と笑顔で言った。ずいぶん前から黙って待っている私は、ただただこの世の理不尽さを心の中で嘆き悲しむしかない。
   私なりになぜこういうことが起きるのか考えてみた。こういう場面では、少なくとも表立ってギャーギャーと文句を言っている地元の人を見たことがない。たまに外国人が自分が先に待っていたのに、なんて文句を言っているのを見かけるが、従業員も周りの人も、何をこの人はそんなに怒っているのかなぁ、というような不思議そうな顔をしている。
   しかしそれは単にそういう人たちに囲まれて暮らしていただけの話であった。フィリピンにもこういうことを理不尽と感じ、イライラしている人はいた。国内線に乗るためにチェックインを待っていた空港で、新しく開けたカウンターに後から来た客を通した従業員に対し烈火のごとく怒っているフィリピン人のオバサンがいた。先に列に並んで待っていた数名の客もこのオバサンに同調していたが、当の従業員や、飛行機に乗るのが初めてみたいな人たちは、例のごとくポカーンと不思議そうな顔をしていた。そうか。理不尽と感じる人と感じない人がいるんだな。
   注意深く観察していくと、ありとあらゆる場面で、こういうことが起きている。例えば、工場団地行きのモルティカブである。通勤時間帯のこの乗り物には、秩序が存在する。混んでいるのに無駄にスペースを使っているような人はいない。長い髪をバサバサと風になびかせ、隣の人を不快にさせるような人もいない。始発ターミナルでは一列にきちんと並ぶ。途中で横入りなんてする不届き者がいたらみんなで責める。
   ところが昼間の、労働者が働いている時間のモルティカブはやりたい放題である。混み合ってきているのに、運賃も支払わない子供を座席に座らせていたり、大きな荷物で乗降口をふさぐ人や、あくまでの自分の世界を守ろうとするように詰めない人など。挙句の果てには、決められた運賃を支払わない人までいる。
   では、こういう人々はダメなのか、といえば、そんなことはない。会社勤めばかりのモルティカブの中は殺伐としている。ワンマン運転手のモルティカブでは、運賃を運転手まで届けるために乗客が中継をしていくのだが、これがあからさまに無視をされる。それでも懲りずにお願いをし続けると、しょうがないと手を差し伸べてくれるのは、大抵が男性だ。女性でしかも会社ではそれなりの地位があるように見える人は、絶対に手を出してはくれない。
   反対にへんな時間のやりたい放題の乗客は、こういうことは率先してやってくれる。車内でお金を落とせば、みんなで探してくれる。やりたい放題に見える人たちというのは、決してわざと嫌なことをしているのではなく、自分が他人に嫌な思いをさせていることなど想像だにしていないだけの話である。現に詰めてください、と言えば、笑顔で詰めてくれるし、乗り降りの際、頭をぶつけたりすると大丈夫と心配もしてくれるし、とてもお金持ちには見えないが、物乞いにはなにがしかあげている。
   そして日々の暮らしを振り返ると、私はこういう人々にずいぶんと助けられている。やっぱり横入りくらいで腹を立ててちゃいかんな。

ジャピーナッツの自己紹介
   1999年1月に初来比。半年後に移住し2000年にフィリピン人夫と結婚し一族に囲まれたコミュニティーで生活をしている。高校生の頃からフィリピン人に間違われ、日本だけではなく世界中どこを旅してもフィリピン人に間違われていたので、フィリピンに来たことはおそらく運命であったと今は思っている。フィリピン人からは「日本語、うまいね。」と根本的な間違いをされるほど溶け込んでおり、最近では日本人と見破られると何だか悔しくなる。

ナビ・セブ第13号[Navi Cebu Vol.13]より

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