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内山安雄のフィリピン取材ノート 「働くばかりが能じゃない」

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 海外を取材して歩いた際に、いろんな国でいろんな運転手やガイドを数えきれないくらい雇ってきた。
 いちいち募集をかけたり、選んだりするのが面倒だから、たいていは最初に売り込んできた人間を適当に雇っている。こんないい加減さが災いしてか、とんでもない運転手やガイドをつかまえることも珍しくない。
 とりわけ私にとってホームグラウンドともいうべきフィリピン取材では傑作ともいえる連中に数多く出会ってきた。
 たとえばマニラのトライシクル・ライダーのノエル少年。トライシクルというのは自転車を改造した乗り物で、客をサイドカーに乗せて足でこぐ三輪車のことだ。
 痩せこけ、十四才にしては小柄なノエルとは、マニラ国際空港近くのスラムの取材で知り合った。ストリートチルドレンなので、一度も学校に行っていないという。親に捨てられた兄弟姉妹五人で段ボールハウスで暮らしているのだとか。
 本当はタクシーとかハイヤーといった、ちゃんとした車を雇ってほうがよかった。が、貧しくも健気に生きるノエルの家に少しでも現金を落としてやろうと思う。そこで、彼にとってふだんの実入りの倍額を保証して使うことにしたのだ。

 ノエルが次の朝、喜びいさんでやってきたのはいいのだが、出発して一時間ほどで突然サドルから崩れるように倒れこんだ。
 何事かと思いきや――。
 お金が全然なくて、この二、三日、ろくに食べていないのだという。おかげで貧血を起こしたのだった。
 やむなく代わりにこの私が三輪車をこぐ羽目になる。やれやれ。
 その翌日もノエルのトライシクルを予約していた。だが、待てど暮らせど待ち合わせの場所に現れない。
 現地の友人いわく。
「収入は半分でも、その子は自分のペースでのんびりやりたかったんだろう。あるいは昨日は二倍の収入があったんで勤労意欲をなくしたのかもしれないな。それがフィリピンスタイルというものさ」
 ふ~ん、なるほど、と納得するしかない。人間、がむしゃらに働けばいいというものではないのかもしれない。

 navicebu8 shikatanai 02内山 安雄(うちやま・やすお)
1951年北海道生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。在学中より世界を放浪 し、ヨーロッパ駐在の旅行添乗員となる。その後、放送作家、脚本家を経て、1980年『不法留学生』で小説家デビュー。しょーこりもなく定期的にアジアを 徘徊。ここ数年の著書に『渋谷女子力』(講談社)や新書『常識人の99%は非常識である』(扶桑社新書)、『恋活 40’s LOVE』(講談社)。またフィリピンを題材とした作品もいちばん多く発表している。主著に『大和魂☆マニアーナ 』(光文社)、『オジさんはなぜアジアをめざすのか』(ロコモーションパブリッシング)、『フィリピン・フール』 (ハルキ文庫)、『マニラ・パラダイス』 (ハルキ文庫)、『樹海旅団』(光文社)など。 毎年いちどはセブ・マクタン島のリゾートに数ヶ月間こもって執筆活動をしている。

 

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