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元日本兵の清水さんとカモテス諸島

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   富山県高岡市に住む清水猛さん(90歳)は毎年、医療奉仕活動のためにこの島を訪れています。清水さんは元日本兵で、戦争中の短い期間、この島で米比軍を相手に命がけで戦いました。しかし戦争が終わってから70年近くが経った今、 医療を受ける機会の少ないカモテスの人たちは毎年、清水さんたち医療奉仕団の来島を心待ちにしています。
   太平洋戦争がそろそろ敗戦の色が濃くなるころ、兵員補充のために日本の文科系学生が戦争に動員されました。清水さんも1943年12月、20歳で日本大学専門部経済学科2年生として陸軍に学徒動員されました。
   「船舶工兵第一野戦補充隊」という部隊に所属し、44年12月にはカモテス諸島のポロ島に送られました。レイテ島にマッカーサーが再上陸してまもなくのころでした。清水さんの所属部隊の主な任務は戦争物資の積み込みや揚陸です。マッカーサー率いる米軍は早くも翌45年1月にはレイテ島の間近にあるポロ島に兵を送ってきました。物量で日本軍を圧倒する米軍に対して、食料も武器もなく勝つ見込みのない清水さんたちが所属する部隊は、米軍陣地に命がけの「斬り込み」を決行しました。まさに自殺行為でした。しかし、清水さんは九死に一生を得て猟師の小船でセブ島へ帰還し、その後米軍の捕虜になりました。収容所生活を経て、1945年12月に帰国を果たしました。清水さんの所属部隊員2,694人のうち、生還したのは809人だったといいます。
   戦後、清水さんは運送会社に勤務し、70年代には戦友会と一緒にセブを訪れていましたが、妻を亡くした翌年の86年、慰霊のため、戦争以来のポロ島を再訪しました。この時、セブでハンセン病撲滅のために医療活動をしていた千葉県の外科医、星野邦夫さん(現在マカティ市在住)も同行しています。
   このとき、清水さんがポロ島で目にしたのは住民の貧しさでした。清水さんは「フィリピンのために何かできることはないか」と考えるようになったといいます。最初は地元の子どもたちのための奨学金の支給から始まりました。続いて清水さんの提言で92年から医療奉仕活動が始まったのです。初回の活動は旧日本兵が戦争中、住民多数を虐殺したとされているポロ島の北東、ポンソン島のピラール町を対象地区に選びました。1960年代の初めのころはまだ、カモテスは「日本人がいってはならない場所」とされていました。そのくらい住民の半日感情が残っていたのです。
   「カモテス島医療ミッション」はそれ以来、セブ都市圏ロータリークラブ(RCMC)の協力で毎年一度、無料の医療サービスを行ってきました。セブ州の医師や歯科医師、看護師もボランティアとして参加しています。今年は 5月19日と20日の両日、奉仕チーム 総勢119名が島に渡りました。当初から島の子どもたちに折紙を教えてきた小倉隆子さんは今回で10回目です。 ポロ町で行われた診療では 計493名が受診、歯の治療が特に喜ばれるらしいのですが、意外なことに子どもたちの「割礼(トゥリ)」手術がいちばん多かったそうです。
   多くの人の協力により支えられて続いてきたこの奉仕活動は、今年でちょうど20年目を迎えました。

清水さんは1996年に私財約1,000万円を投じて、ポロ町のシマガン区に礼拝堂「メモリアル・チャペル」(写真)を建設しました。日本兵の慰霊碑を兼ねての教会建設は珍しいのですが、清水さんはその動機について次のように述べています。
  「多くの慰霊事業は自分の部隊だけの、わが家族だけの、きわめて日本的な行動が、宗教や習慣の異なる現地の人々の反感を買うことも多かった。慰霊という言 葉には戦中に犠牲となった日、比、米の総てを対象とし、平和を祈念するものでなくてはならないと思う」。(『曙光新聞』復刊第81号「カモテス近況」より)
 また、教会前のレリーフには次のように記されています。「この地は1945年1月31日、ポロの米軍司令部に対する日本人の『自殺攻撃』が 行われた場所である。この礼拝堂は、斬り込み攻撃の生存者である清水猛氏のポロ島民への平和の贈り物である」。斬り込み地点だった教会近くの三叉路には今 もアカシアの大木が残っています。

ナビ・デ・セブ第1号[Navi de Cebu Vol. 1]より

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